2010年4月26日月曜日

健康生活 第3回 ストレスとその対処 その2

古典的なセリエの話から,ラザルスのモデルを経て,ストレス対処の話。大別すると3つの対処行動に分けられることを話す。私が知っていたのは,そして日常的に患者さんにもお話しするのは,問題焦点型,情動焦点型,逃避・回避型の3つ。少し古くなるが,津田先生と尾関先生による簡潔な質問紙をワークショップとして実施して,自分の対処行動の特徴を理解してもらった。

たまたま前日(水曜日)に民放某局のとある番組で,荻野アンナさんのうつとストレス対処の話題が取り上げられており,そこでは4つのパターンに対処行動を分類していた。積極行動型(問題焦点型),気晴らし型(情動焦点型),否認型(逃避型),そして回避型。この番組では,アドバイザーとして東海大学の保坂先生を迎えていたが,さてこうした場面に心理学者を招いてもらえると嬉しいのだけれど・・・。また,この番組では上記の4つのパターンにそれぞれ4問ずつで質問紙を実施していたが,最初からパターンを教えて,そのパターンごとに4つずつ質問,そして満点の半分以下のパターンが2つ以上あると,うつになりやすいタイプと判定するとか,実施上の問題点があるように感じられた。保坂先生が筆頭のストレス・コーピング・テストの妥当性を検討した論文も出版されていることから,そのテスト自体には問題がないのだろうけれど・・・。マスコミベースになったときにわかりやすさの方が優先されてしまう一例なのかもしれない。

2010年4月21日水曜日

心理学(共通教育) 第3回 性格 その2

性格の2回目。自分に直接関わっていたり,きょうだいとの関係や親との関係など体験的に感じることができる内容であるためか,きょうは理論的な内容だったのだけれど,楽しんでもらえたみたい。

性格はおそらく心理学が扱っている数多くのテーマの中でも,きちんと理解しようとすると最も難しいものの1つだろう。というのは,自分が体験的に感じる内容と,心理学が明らかにしてきた内容とに,小さくないギャップがあるためである。あらためて言うまでもなく,血液型と性格の関わりについてはある調査研究によれば6割くらいの学生が何らかの関係があると「信じている」という。一方で心理学が明らかにしてきたのは,その関わりのなさと,バーナム効果に代表される,「なぜそんなことを信じてしまうのか」ということ。行動分析学の言葉を使えば,話題となっているところに参加できるという正の強化と,否定することがたとえば空気を読めないといった(これまた意味のない)反応によって正の罰を受けるという社会的な強化・罰によって制御されていると説明はできる。出生順位と性格,親の養育態度と性格,親の性格と子の性格などなど,日常的に問題にされることは枚挙にいとまはないが,さてうずたかく積み上げられてきた研究成果はと眺めてみると,結局ネガティブデータしかなさそうである。

たぶん,私たちが日常的に性格を考えるとこに重要なこと,とりわけ他者と関わる際に気をつけた方がよいのは,ステレオタイプ的な理解も含めて,その人の性格にレッテルを貼ってしまわないことなのかもしれない。

今年度から始めた学習記録(といっても,リアクションペーパーを順次綴じていくだけだけれど)をファイリングしてもらうために,バインダーとファスナー配布したりで,時間を取ってしまい,予定していた知能はホントにさわりだけとなった。そのため,授業で使ったファイルのアップロードはありません。

2010年4月16日金曜日

健康生活 第2回 ストレスとその対処

 本格的な授業の最初はストレス。一般に知られているストレスの概念がセリエに端を発していること,ストレッサーがいくつかのタイプに分類できることなどをまとめる。汎適応症候群を今更紹介する必要はないのかもしれないが,生体ストレス,心的ストレスが身体だけでなく心的なレベルでも影響するメカニズム,心身の相互の関わりを考える上では,導入としてそれなりには理解しておいた方がよいよいに思う。

日常的に学生がストレッサーと感じていることを挙げてもらったところ,満員電車,バイト先でのできごと,つまらない授業,自分の体型などなど,ある程度予想したことが多かった。

2010年4月14日水曜日

心理学(共通教育) 第2回 性格

きょうは,新版TEGの旧バージョンを実施して,心理学でどのように性格を測定しているのか,また心理学での性格の定義と理論(類型論まで)についてまとめた。

昨年秋学期の授業評価アンケートの結果について報告を受けた。とても残念な結果。残念というのは,すべての項目で,全体の平均値を大きく下回っていたのである。具体的に書いてくれたコメントや,リアクションペーパーに書かれていた内容からは,予測もしていなかったような結果である。これは事実だから受け入れるしかないのだけれど,さて,それではどうすれば学生が満足するような授業になるのか,ほとんど手がかりが得られないのも事実である。今年度から始めた学習記録で少しでも改善すればよいのだけれど・・・。

授業で使ったファイルは,左のリンクをたどってダウンロードできます。今回のアップは,来週の性格の分までしてしまっています。

ところで,性格検査を実施したときに必ず含まれる学生の反応に,「当たっている」というものがある。もし,「当たっている」と言えるなら,それは何か基準がなければならない。検査結果が妥当かどうかを判断する基準をすでに持っていることになる。もしそうなら,性格検査を実施することに意味がないということになる。尤も,こうした反応は,自分の性格についてのものだから,臨床現場などでクライエントの性格特徴を知るために実施するのとは意味が異なると言えなくもない。それでも,もし検査結果が自分が持っている基準と異なったとしても,それは「当たっていない」のでなく,自分自身が知らない側面をその結果が表現していると考えた方がよいのかもしれない。

2010年4月9日金曜日

健康生活 第1回 健康心理学とは

 昨年度より担当させていただいている,神戸松蔭女子学院大学の健康生活V。内容は健康心理学のようなもの。私のまったくの専門というわけではないが,臨床心理士として働いていることもあり,自分なりの関心は浅くない。昨年度初めて担当して,私自身がとても勉強になり,また楽しむことができた。

 今年度は,昨年度とほぼ同じ内容で進めようと考えている。第1回は健康とは何か,健康心理学とは何かというテーマである。富良野塾の塾生のデータを紹介して,日常的には気づく必要のない,私たちの生活を支えている根幹を確認し,健康とは何かを考えた。

心理学(共通教育) 第1回 心理学とは何か

 共通教育の心理学の1回目。いつものように,心理学とは何かというテーマ。今年度は,いつも高校生を対象とした模擬授業で行う「連想ゲーム」をやってみた。学生は楽しんでくれたみたい。

 要するに,心理学(に限らないかもしれないが)は,一般に考えられているよりもずっと広いテーマを扱う学問であること,また,理系から文系までアプローチの仕方,研究方法も多様であることがわかってもらえれば十分である。

 今年度から,リアクションペーパーを学習記録と名称変更して,必ず学生に返却することにした。毎回の授業で,おおよそ何がわかって,何が疑問として残ったかなどを,記録として残ればよいかと思ってのこと。うまくいけば,他の授業にも広げていけばよいかもしれない。

2010年4月7日水曜日

4月7日 再開

前回の投稿の日付が2月24日で,この投稿が4月7日というと,ちょっとの間のように見えてしまうが,実は1年以上の時間が開いてしまった。

2010年度入試も,神戸親和女子大学の受験者,合格者,入学者は昨年度を上回り,(残念なことに心理学科を除いてだが)定員をはるかに超える入学者を迎えることができた。心理学科がなぜ定員にわずかながら届かないかは,もう個人的には親和の七不思議のひとつに数えたいくらいだが,がっかりしても仕方ない。またいつもの日常が始まって,今年度の入学生とも顔合わせが終わったところ。

さて,今年度は秋に日本行動分析学会の年次大会を親和で開催する。これを成功させることがまずひとつの目標(というか使命)。そして,入試の仕事が終わって,また研究活動をしっかりと思っているところである。そんなときに,昨日は科学研究費の不採択(連戦連敗である)の知らせも届いたが,できることをひとつひとつ積み上げていくしかない。