ラベル 臨床心理学 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 臨床心理学 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2008年12月12日金曜日

臨床心理学概論

臨床心理学概論を12月2, 9日と2回担当する。内容は行動療法。それに伴って,科学,エビデンスベイストなどの話をする。

おそらくはこうした概念は1回生にとってみるとなじみのないものだろう。もともと医学も臨床心理学も,患者さん(様),クライエントさん(様)の問題が解決に向かうことを目的とするものであり,科学的な説明としてより信頼性や妥当性があるということは,副次的な目的に過ぎなかった。けれども,科学的な,知ることのできる範囲が広がるにつれて,もともと知ることだけが目的であった科学も,必然的に応用や社会的な還元を求められるようになっている。

エビデンスベイストという概念が提唱されるようになったのが,20世紀の最後の10~15年くらいであったことは,ある意味,驚きである。医学だけでなく,心理療法においても,エビデンスベイスト心理療法という呼称が使われるようになってきたのは,もちろんそれより遅れてのことだった。

ただ,精神医学の領域と同様に,心理療法でもエビデンスベイストという概念を持ち出すことが,必ずしも容易でないのは,証拠のレベルをどのように設定するかという問題とともに,今後も議論が必要である。

おそらく,認知行動療法を含む行動療法は,心理療法の中でも,アプローチとしてできるだけ科学的であろうとする最右翼である。当初,このようなアプローチに対しては,学生からの「気持ち」の問題を大切にしていないなどという反発を予測していたのだが,たとえばパヴロフ型条件付けによるパニック障害の説明などをすると,私にも似たような経験があることを少なくない学生が感想に書いてくれる。

心理療法がまだまだ発展途上にあることから,心理学の基礎と同様に,さまざまなアプローチがあることをまずは知ってほしいというのが,さしあたってのメッセージである。

授業中に紹介した,もともとは臨床心理の専門家でもなんでもなかった,自閉性障害の子どもさんを持つお父さんが出版されている本を,冒頭にあげておいた。

藤居 学・神谷 栄治 (2007). 自閉症―「からだ」と「せかい」をつなぐ新しい理解と療育 新曜社
藤居 学 (2008). 自閉症の子どもと家族の幸せプロジェクト―お父さんもがんばる!「そらまめ式」自閉症療育 ぶどう社

いずれも,親和の図書館に配架されていなかったので,購入依頼を出しておいた。

2008年3月29日土曜日

「医師の指示の下」という体制は限界

きょうはいつもと毛色の違った話。この春から(とうとう)大学院のゼミを担当することになったからというわけでもないが,新たに臨床心理学のカテゴリを作ってみようと思わせてくれた記事の紹介である。

医師の指示の下という体制は限界というタイトルだが,現厚生労働大臣の桝添氏の「安心と希望の医療確保ビジョン」の第5回会議を受けての総括である。残念ながら,この話は看護師・助産師の業務範囲についてのものなのだが,臨床心理士とも関わってくる可能性がある(希望的観測だけれど)。

よく知られているように,現在の臨床心理士は国家レベルでなく一学会が事実上の母体となって設立した財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定する資格である。スクールカウンセラーの仕事も各都道府県の臨床心理士会から希望調査がくるなど,学校場面で大きな役割を果たしている一方で,精神科領域からは仕事が出来ないという批判を浴びることも少なくない。臨床心理士が国家資格化できない最大の理由は日本医師会や日本精神科病院協会をはじめとする医師側と心理士側とのおりあいがつかないことと言ってよいだろう。

これは理由・原因と言うよりも,ある意味で結果である。つまりなぜ折り合いがつかないのかについての原因によって生じた状態に過ぎない。「医師の指示の下」という体制が限界という話が臨床心理士とも関わってくるのはこの点においてである。「医師の指示の下」という体制が医療現場において原則であるのは,現在臨床心理士としてでなくても,心理士の勤務状態を見れば明らかである。私が心理士として勤務しているクリニックでも万一何かの問題が発生したときに責任を負うのは私でなく主治医である。この記事にあるとおり,看護師・助産師と同様に,臨床心理士の意識レベルも正規分布している。そしてここで指摘されているように,分布の中央を対象として議論が成されなければならない。

さて,私の意見は医療心理士(仮称)と臨床心理士の2資格(プラス1)で国家資格化することである。臨床心理士は医療心理士の資格取得を前提としてしか取得できない。医療心理士は学部卒として医師または臨床心理士の指示の下でのみ活動できる,臨床心理士は大学院修了を前提として(但し,一部の大学院にある専門職大学院は認めない),医師と共同して活動できる。さらに,現実問題として,専門医と同じようなもうひとつ上位の資格を設置して,医療現場で働く専門臨床心理士については医療現場で診療報酬点に準じた活動ができるようにする。臨床心理士については,医師と同様に自身の行為についての責任を法的に設定する。

さて,看護師・助産師が医師の指示を受けないで独自の判断で活動できるようになれば,臨床心理士の問題も少し風穴が開いてくるのではと期待しているのだが・・・。