2008年9月28日日曜日

日本心理学会報告 その1

第72回日本心理学会に参加した。久々の北海道である。

なかなか具体的な研究が進まない状況でも,何とか共同研究の先生方のご協力・ご助言を得て,毎年ここでは発表を続けられている。卒論指導の学生が関心を持ったテーマを何とか形にしたいというのもその理由の一つである。今年度は,ウォーキングの効果についての発表。万歩計を持ち歩き,そこに表示される消費カロリーが強化子として働きうるかという素朴な研究である。結論には遠い中間発表である。

今年の発表は,実はそれほど本意でなかった。というのは,計画時点で予定していた手続きの半ばまでしかデータが取れなかったためである。それでも瓢箪から駒。あるいは予想外にと言ってもよいかと思うが,いくつかの貴重なご助言をいただくことができた。とりわけ,自分たちだけでは気づかないような視点を提供していただけることが何より好子として機能する。東京時代にお世話になった先生お二人,近くで発表されていた先生からは体験談を交えていくつか貴重なアイディアをいただくこともできた。私自身は,実はそれほど深い関心を持っているテーマではないのだが,今後このようなテーマに関心を持って卒論や修論をと考えている学生と,より興味深い計画を考え出す材料になった。この場を借りてお礼を申し上げたい。

ところで,話は学会のことからは離れるが,上述の先生のお一人にとても印象深いエピソードがいくつもある。その中のひとつで折に触れて学生に話すことをここにも書いておこう。

すでに大きな存在だったその先生の授業を初めて履修したのは,演習や実習系の複数担当の授業は別としてだが,大学院になってからだった。その授業の中で時折私にも質問されたというだけのことなのだが,それは,「自分はこれを知らないのだけれど,教えてくれないかな」というものだった。学生に自分が知らない,わからないことがある,それを教えてくれというのは,当時の私には想像のつきにくいことだったのだ。そのように学会全体をリードするような存在の先生であれば,何でもご存じで,学生に尋ねなければならないようなことはないのではないか,しかもご自分の専門領域と関連した内容であるのだから。

知らないことを知らないと言う,ごく単純なことなのだけれど,スゴイと言う印象を深くしたのである。もちろん急いで付け加えるが,そのように知らないと言えるのは,(おそらく)ご自分のきちんと理解されていることについて自信があるからだろう。考えてみるまでもなく,自分一人で考えが及ぶ範囲というのは無限でない,知らないことを知らないと言うことで,学問の前で(このような表現が適切かどうかわからないが)謙虚である,古典的にはアリストテレスの無知の知と通じる,研究者としての態度の基本を教わったのは彼からだった。

翻って,わかっていないことを何となくわかったような言葉で説明するetc...いやいや,それは自分にも当てはまることである。もういちどきちんとのその姿勢で向き合うことを考えるだけで十分である。

ワークショップ,もうひとつの共同発表,認定心理士の資格関連,北大の印象等々,追々時間を作って書いていきたい。

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