
臨床心理学概論を12月2, 9日と2回担当する。内容は行動療法。それに伴って,科学,エビデンスベイストなどの話をする。
おそらくはこうした概念は1回生にとってみるとなじみのないものだろう。もともと医学も臨床心理学も,患者さん(様),クライエントさん(様)の問題が解決に向かうことを目的とするものであり,科学的な説明としてより信頼性や妥当性があるということは,副次的な目的に過ぎなかった。けれども,科学的な,知ることのできる範囲が広がるにつれて,もともと知ることだけが目的であった科学も,必然的に応用や社会的な還元を求められるようになっている。
エビデンスベイストという概念が提唱されるようになったのが,20世紀の最後の10~15年くらいであったことは,ある意味,驚きである。医学だけでなく,心理療法においても,エビデンスベイスト心理療法という呼称が使われるようになってきたのは,もちろんそれより遅れてのことだった。
ただ,精神医学の領域と同様に,心理療法でもエビデンスベイストという概念を持ち出すことが,必ずしも容易でないのは,証拠のレベルをどのように設定するかという問題とともに,今後も議論が必要である。
おそらく,認知行動療法を含む行動療法は,心理療法の中でも,アプローチとしてできるだけ科学的であろうとする最右翼である。当初,このようなアプローチに対しては,学生からの「気持ち」の問題を大切にしていないなどという反発を予測していたのだが,たとえばパヴロフ型条件付けによるパニック障害の説明などをすると,私にも似たような経験があることを少なくない学生が感想に書いてくれる。
心理療法がまだまだ発展途上にあることから,心理学の基礎と同様に,さまざまなアプローチがあることをまずは知ってほしいというのが,さしあたってのメッセージである。
授業中に紹介した,もともとは臨床心理の専門家でもなんでもなかった,自閉性障害の子どもさんを持つお父さんが出版されている本を,冒頭にあげておいた。
藤居 学・神谷 栄治 (2007). 自閉症―「からだ」と「せかい」をつなぐ新しい理解と療育 新曜社
藤居 学 (2008). 自閉症の子どもと家族の幸せプロジェクト―お父さんもがんばる!「そらまめ式」自閉症療育 ぶどう社
いずれも,親和の図書館に配架されていなかったので,購入依頼を出しておいた。