2008年12月24日水曜日

またいい本が出ました

舞田竜宣・杉山尚子 (2008). 行動分析学マネジメント: 人と組織を変える方法論 日本経済新聞出版社

応用行動分析を中心とした,行動分析学の臨床系の本がこのところ多く出版されるようになってきた。そんな中で,島宗理先生(現法政大学)のパフォーマンスマネジメント以来,行動マネジメント系のよい本が出版されました。

集英社新書の行動分析学入門も版を重ねているとお聞きしたが,この本もそうなりそうである。目次を見れば一目瞭然,架空の会社を想定して現実場面における問題の捉え方,介入の方法の具体例を紹介しながら,強化,弱化,消去,スケジュールなどから,確率操作,ルール支配,トークンまで,行動分析学の基礎を学ぶことができる。

ビジネスの世界なんか私には関係ないと,最初からルールを消去の弁別刺激にしないで,ぜひ手にとって目を通して欲しい。

12月12日のコメントで紹介した2冊は現時点で吉野が借り出しています。ご希望の方は図書館または吉野まで直接ご連絡ください。

2008年12月18日木曜日

初めての島根,121年めの親和


これまで日本の中で訪れたことのない都道府県が5つ。そのうちの一つが島根県だった。過去形にしたのは,今週の頭に高校訪問の仕事で初めて足を踏み入れる機会に恵まれたから。

親和でも,地方での入試会場を準備している。一般A方式の初日,1月28日が最も多く,本学(鈴蘭台キャンパス)・三田・姫路・豊岡・大阪(梅田)・岡山・広島・米子・高松・松山と10会場である。一般入試の受験者の動向を知るべく,親和の学科関連の受験希望者を耕すべく,また,推薦入試の受験者のお礼を伝えるべく高校訪問を実施中なのだが,その一環として松江から大社,出雲,雲南,米子をひとまわりした。

ちょうどこれから一般入試の希望などについて生徒と話すという高校もあれば,私立は主に推薦での入学希望が多く,センター試験や一般入試は国公立を目指す生徒が多いという高校もあり,当然ながら様々である。

親和は,今年で創立121年を迎える。兵庫県内で現在大学を有している学校法人の中では,神戸女学院,聖和に続いて3番目に古い歴史を持っている(ちなみに,その次は関西学院)。ふと気づいたのだが,親和を除くこれらの学園はすべてミッション系であり,日本人が日本人のために,特定の宗教に基づかないで開いた学園としては親和が一番古く,以来,主に地元に密着する形で親和はその歴史を刻んできたことになる。そして,神戸から兵庫県内,近隣の府県へと翼を広げようとしているのである。そうした歴史の一翼を担えることを,誇りにも感じつつ高校の先生方とお話しさせていただいているのである。

たまたま,私が訪問した火曜日は本当に一日中光に満ちあふれた,しかも穏やかな天候に恵まれた。ここに掲げたのは,ようやく夕方になってから少し気分的な余裕ができて撮影した大山の様子である。このときにはすでに安来から米子へと車を走らせており,鳥取県に戻ってはいるのだけれど。山陰からひとりでも多くの受験生,そして入学生を迎えることができればと切に思う。

2008年12月15日月曜日

心理学(共通教育) 第10~11回 知覚

いつも楽しんでもらえる知覚。現象として面白いけれど,それを説明するとなると難しい。難しいからこそ面白いところもあるのだけれど・・・。

まあ,心理学が,一般に考えられているようなものでなく,しかも面白いものだということを実感してもらいやすいテーマであることは確か。

だからというわけでもないが,11月に入ってから4回(そして明日もう1回予定されている)高校での模擬授業や進路相談などでも,自分は学習心理学が専門だというのに,その専門よりも,知覚の話を好んでする。それをとっかかりにして,心理学の基礎的な研究のおもしろさに目覚めてくれればこんな嬉しいことはない。

しかし,1番面白いのは,そのような自分でも気づいていないようなことをごくごく日常的に繰り返して,それをちょっと振り返っておもしろがったりする,人間そのものなのだけれど・・・。

学習心理学Ⅱ 第11回 社会的行動

選択行動の前に,社会的行動を扱う。言語行動のエコーイックとの関連が高いと考えたためである。リアクションベーバーによれば,むしろ,Banduraのボボ人形の実験の方がインパクトがあったみたい。子どもたちに,そのようなビデオを見せることの影響を考えると,R12とかR15とかの必要性がわかると書いた学生もいた。

善悪や倫理的な感覚についても,学習が大きな役割を果たしていることに,これとの関連で気づいてくれればとも思う。何がよいことで,何がよくないことで,何が社会的に受け入れられることで,何がそうでないかといった,獲得してしまった後では,当然と感じてしまう,そして言語的にも説明することの難しいこうした感覚も,辿ってみれば,学習によっていることに気づいてもらえると思う。

ずっと更新していなかったために,授業で使ったファイルのアップも滞っていました。12月11日の授業で配布した授業内レポートについての説明もアップしました。レポート課題については,当日配布した手書きのものと異なっていますが,内容は同一です。

2008年12月12日金曜日

臨床心理学概論

臨床心理学概論を12月2, 9日と2回担当する。内容は行動療法。それに伴って,科学,エビデンスベイストなどの話をする。

おそらくはこうした概念は1回生にとってみるとなじみのないものだろう。もともと医学も臨床心理学も,患者さん(様),クライエントさん(様)の問題が解決に向かうことを目的とするものであり,科学的な説明としてより信頼性や妥当性があるということは,副次的な目的に過ぎなかった。けれども,科学的な,知ることのできる範囲が広がるにつれて,もともと知ることだけが目的であった科学も,必然的に応用や社会的な還元を求められるようになっている。

エビデンスベイストという概念が提唱されるようになったのが,20世紀の最後の10~15年くらいであったことは,ある意味,驚きである。医学だけでなく,心理療法においても,エビデンスベイスト心理療法という呼称が使われるようになってきたのは,もちろんそれより遅れてのことだった。

ただ,精神医学の領域と同様に,心理療法でもエビデンスベイストという概念を持ち出すことが,必ずしも容易でないのは,証拠のレベルをどのように設定するかという問題とともに,今後も議論が必要である。

おそらく,認知行動療法を含む行動療法は,心理療法の中でも,アプローチとしてできるだけ科学的であろうとする最右翼である。当初,このようなアプローチに対しては,学生からの「気持ち」の問題を大切にしていないなどという反発を予測していたのだが,たとえばパヴロフ型条件付けによるパニック障害の説明などをすると,私にも似たような経験があることを少なくない学生が感想に書いてくれる。

心理療法がまだまだ発展途上にあることから,心理学の基礎と同様に,さまざまなアプローチがあることをまずは知ってほしいというのが,さしあたってのメッセージである。

授業中に紹介した,もともとは臨床心理の専門家でもなんでもなかった,自閉性障害の子どもさんを持つお父さんが出版されている本を,冒頭にあげておいた。

藤居 学・神谷 栄治 (2007). 自閉症―「からだ」と「せかい」をつなぐ新しい理解と療育 新曜社
藤居 学 (2008). 自閉症の子どもと家族の幸せプロジェクト―お父さんもがんばる!「そらまめ式」自閉症療育 ぶどう社

いずれも,親和の図書館に配架されていなかったので,購入依頼を出しておいた。

2008年12月10日水曜日

学習心理学Ⅱ第9,10回 言語行動・ルール支配行動

11月27日と12月4日の2回で,言語行動とそれに関連するルール支配行動を扱った。

言語行動は一般的に,ヒトに特有のものと考えられることが多いが,いわゆる文字言語を含めて,他者とのコミュニケーションがその機能の中心であることを考えたとき,特有でなくなることに気づくことはそれほど難しくないだろう。たとえばアイヌ民族のように,ヒトであっても文字言語を持たない文化がある一方で,ミツバチやイルカなどのように他個体に情報を伝える方法を持っている動物がいることもよく知られている。

行動分析学から言語行動を見つめたときの何よりの特徴は,言語行動も他の一般の行動と同様に(ということは,ラットがレバーを押したりハトがキーをつついたりするのと同様に),獲得され,維持され,抑制されるということである。マンド,タクト,エコーイックと分類される獲得・維持過程だけでなく,そうした言語行動を分析することによって,操作的に「意識」の分析ができるということである。