2008年4月29日火曜日

脳が意志を持つ?

最近飛ぶ鳥を落とす勢いの茂木さん。きょうもNHKで持論・すべては脳が意志を持ち,脳が行っているというトートロジーを展開している。脳が飽きる,脳がつまらないと思う,脳が不確実なことと確実なこととのバランスを取ろうとするetc.。「脳」を「私」に置き換えても,「人間」とか「自分」に置き換えても,全く意味は変わらない。

動物は飽きられない,人間だけが飽きられる,ひとつひとつの発言がもう意味不明である。「飽きる」をどのようにていぎするのだろう,「脳は変わることができる」ということばと,「人間はかわることができる」以前に,「人間は経験によって変わる存在である」という行動分析学の基本理念と,どちらが「何かを説明」しているのだろうか。変わることや判断することや脳が行っている活動を否定する必要はないし,それは事実だが,それは何によって生じている活動なのだろう。

「脳」の活動,機能が,「こころ」であること,「脳」の構造はその入れ物であることは,もはや否定使用のない事実であるが,脳を擬人化することは本当に奇妙に響く。クオリアを理解したいという話と,彼が最近様々なメディアを通じて発言していることとの弁別をして欲しい。少なくとも,発信する彼でなく,それを媒介するメディアに判断する力を持って欲しい。彼の発言のいくつかは,スピリチュアルだとか,一時期の「あるある」と変わらない。「あるある」の一時期と同様に,「科学」のふりをしているぶんだけ一層悪質である。

ちょっとだけ擁護すれば,彼もいっぱいいっぱいなんじゃないかな。要求されたことに応えようとする,ナイーヴな良心の故に,あるいは,顕示性のためにきちんとわかっていないことまで,それなりに応えようとしているのではないかしら。それが不憫というか痛ましくさえ見えてしまうのである。

2008年4月25日金曜日

神戸松蔭 学習心理学Ⅰ第3回 行動の種類


人間の行動の特徴を一言で言えば,学習行動がレパートリーのほとんどであるということです。もちろん出発点は生得的なものですが,その出発点からひとりひとりの経験(周囲との社会的・物理的関わり)によって変化する度合いが他の動物たちに比べて大きいのです。

ところで,授業で紹介したミッキーマウスの進化ですが,あれから再度調べたところ,モーティマーは甥でなく,ミッキーのおじとミニーの幼なじみのふたつのキャラクターがあるそうです。甥は当初お話ししていたとおり,モーティー Morty でした。またモーティーはフェルディ Ferdie と双子なのだそうです。その1シーンを画像としてアップしました。

しかし,松蔭での学習心理学の日はこれまで3回続けて雨模様。このようなとき,リアクションペーパーにもありましたが,「私は雨男?」という表現が出てくることがあります。このあたりのことは,人間の随伴性判断や確率の理解に偏りがあるためと考えられているようです。それにしても,授業でも一度話したように,私はこれまで晴れ男であると自認していたのですが・・・。来週こそは晴れるように,みんなでてるてる坊主(今でも作られているのでしょうか?)でも作りましょうか。

来週に話す分まで含めて,ファイルをアップしました。ここからどうぞ。

2008年4月23日水曜日

ファイルのダウンロードについて

結局理由はわからないのですが,通常の方法でダウンロードできるようになっているようです。おそらく,Googleのシステム上の問題だったのでしょうか。私は,このようなときに,日頃が便利なだけによけいいらいらしてしまいます。いろんなことが便利になったぶんだけ,しばらくの時間待つとか,我慢するとかいった行動が生じにくくなっているのかもしれません。最近の若者は切れやすいといった表現を安易に使ってしまいがちですが,それを性格や気質の問題にでなく,環境との関わりによって考えてみれば(つまり,行動分析学的に考えてみれば),何かが見えてくるような気がします。

心理学(共通教育) 第2・3回 感覚・知覚その2

初めてのサテライトキャンパスをつないでの授業,先週と今週の2回が終了した。それに伴って,授業計画を変更して,性格・知能を後回しにして,感覚・知覚の話から始めた。

錯視の話は,たぶん誰が聞いても見ても,素直に「おもしろい」と感じられる内容であると信じている。私の専門である行動分析の話のように,少し言葉などを理解しなければならないのに対して,素直に感じられる,文字通り「感覚・知覚」される内容である。そして,そのように入り口でおもしろみを感じつつ,奥行きもとても深い。人間の感覚の不思議さ,複雑さを知ることのできる興味深い分野である。

学問が,そのように入り口でおもしろいと感じられて,それをきっかけとして深めていければいうことはない。リアクションペーパーにも,おもしろいという反応が数多くあるが,現象としてのおもしろさだけでなく,その背景の特徴や理論に,またそうした現象をとらえる方法自体のおもしろさも感じてもらえるようになればと思う。

左のリンク一覧, 神戸親和 心理学 (共通教育) から前回と今回と使用したファイルをダウンロードできます。

2008年4月22日火曜日

認定心理士 認定委員会出席しました

先週末,2ヶ月に一度開かれる認定心理士資格認定委員会に出席してきました。年度初めと言うこともあって,多くの申請があったのですが,今回もこれまでと同様に,基礎科目で不合格になった申請が数多くありました。つまり,その内容が,認定委員会が要求する研究法,実験実習の基準を満たしていないというものです。再度強調しておけば,大学で心理学を学ぶことの意味は,研究の方法論の獲得と,実践するための技術の獲得にあります。

もうひとつ気にかかったのは,書類作成上の単純な不備が散見されたことです。親和では私が担当して,説明会を行い,具体的に記入する内容をプリントで配布し,提出前に再度不備が内かどうかを確認してから一括して認定委員会に送付するようにしています。ひとりひとりが注意していても間違いを無くすことは非常に難しい相談だからです。申請用紙,特に科目履修の一覧には,証明者としてそれぞれの大学の先生(多くはゼミ担当なのでしょうか?)の署名と捺印をいただいていますが,その際にチェックしていただければ,例えば合計の単位数不足で不合格になってしまうようなことを無くせるとは思うのですが・・・。

ファイルのダウンロードについて

理由がわからないので困っているのですが,なぜかリンクを貼ってもダウンロードができない状態が続いています。しばらくの間は,ここからファイル名を探してダウンロードして下さい。

2008年4月17日木曜日

神戸松蔭 学習心理学Ⅰ第2回 行動のなぜと科学的説明

今年度も担当させていただく神戸松蔭女子学院大学での学習心理学ⅠとⅡ。内容は昨年度と基本的に同じものとする予定。

授業で使用したファイルは,パワーポイントではないけれど,ここからダウンロードできるようにしている。配布したプリントは,これらの一部だが,授業中にアドリブで話した内容についてはファイルには反映されていない。むしろ,このblogの中で,リアクションペーパーの内容などにも言及しつつ,書き込む予定である。

きょうの授業で話した科学としての心理学の問題は,何人かの学生には理解しづらかったようである。哲学と心理学はつながりを感じられるけれど,科学と心理学とはつながらないという反応があった。授業中にも話したように,哲学と科学とは基本的には同じものだった。Phil(愛する)+Sophia(智)としての哲学,Scere(知る)を語源に持つ科学。心理学が日本に学問として入ってきたときには,すでに今でいうところの自然科学の多くはいわゆる哲学からは枝分かれして独立した学問として成立していたのに対して,心理学は依然として哲学の中に含まれている学問であった。さらに,これは奇妙なことだと私は思うが,哲学は大学の「文学部」の中に置かれてしまったために,心理学もそこから枝分かれした後も,日本では「文学部」の中に当初置かれてしまっていた。

現在,心理学は非常に様々な学部の中に,名称も様々に設置されている。神戸親和では発達教育学部,神戸松蔭では人間科学部,私が卒業した大学では,文学部,教育学部,人間科学部の3つの学部にそれぞれ心理学科に近いものが置かれていたし,学位を取得した大学では,生命科学部(含まれている学科は,解剖学・発生生物学,生化学・分子生物学, 生物学, 人間コミュニケーション科学, 薬(理)学, 音声・言語学, 生理学)に置かれていた。

結局は,心理学が非常に広範な領域や方法論を持っている学問であること,学習心理学や行動分析学はその中で,科学的な視点を持つアプローチであること,他の心理学の領域と排他的な関係でなく相補的な関係(なぜなら,心理学が研究対象としている人間そのものが多面的な存在であるから)にあることがわかってもらえれば十分である。

2008年4月15日火曜日

大学院M1ゼミ 教員による研究室紹介

今年度から担当することになった大学院のゼミ,事務連絡とアウトラインを紹介した第1回に続いてのきょうは,各指導教員の研究室紹介だった。

たいへいに申し訳ないことに,寝不足が祟って先生方のご説明を一部聞き逃してしまったのだが,全般的にはとても興味深いものだった。と,同時に私の立場である行動分析学のユニークさ(あるいは特異さ・異端さ)を痛感する時間だった。

何より,行動や症状の捉え方を形態的に捉えるか,機能的に捉えるかという違いが大きい。摂食障害であれ,心的外傷であれ,そこに見えている形態からアプローチしていくのか,それとも顕在的には同一であってもその行動の持っている働きの違い,逆に顕在的には全く異なる行動や症状であっても,その行動の機能の共通性に注目するのかには,臨床的なアプローチであれ,研究上のアプローチであれ,非常に重要な違いがある。他の先生方が基本的には前者のアプローチを採られていることから,私の立場の特異さ・ユニークさを,先生方を含めて理解していただければよいのだが・・・。幸い査定演習と研究法特論という時間が与えられているので,こうした内容についても適宜議論できればと思っている。

心理学(共通教育) 連絡事項

明日(16日)から,三宮サテライトキャンパスとの双方向授業を始める。これに伴って,教室変更およびシラバスにある授業計画の変更をする。

鈴蘭台キャンパスの教室は311教室(3号館1階の大教室)になる。また,受講生のバランスがどの程度になるかわからないため,当初第2~3回で扱う予定にしていた,「性格と知能:その人らしさ」を後回しにして,感覚と知覚:見る,感じるを明日と来週に扱うこととする。

次週以降も含めて,予定は以下の通りである。
2~3 感覚と知覚:見る,感じる
4~5 認知・記憶: わかる,考える
6~7 学習:ふるまいとこころ
8~9 発達:こどもから大人へ,そして老いるということ
10~11 性格と知能:その人らしさ
12~13 社会的行動:人が出会うとき
  14 生理:こころのありかの背景

これだと,教科書の構成と一致するために,むしろこの方がよいのかもしれない。その効果を判断する良い機会ととらえたい。

2008年4月9日水曜日

心理学(共通教育) 第1回 心理学とは何か

共通教育の心理学第1回。いわゆる概論,一般教養の心理学を担当するのは前任校以来である。最初に話すことはいつも決まっていて,要するに心理学は一般に考えられているよりもずっと広い領域を持つ学問であるということ。具体的にどれだけ広いかは,これから順に話していくことになる。もしかすると,そんなのは心理学ではないとクレームをつけたくなるような内容があるかもしれないが,そのときは,あなたが考えている心理学は,学問としての心理学の一部に過ぎないのだということを意味する。

さて,これから毎回の授業で使用したスライドのすべてをこのページを通じてアップし,聞き逃した,あるいはスライドが変わるのが早くて書き取れなかったという要望に応えたい。左の心理学(共通教育)のリンクを使うか,今回のファイルについてはここから右クリックして対象を保存するというような選択肢を選ぶことでダウンロード出来るようにしていく。

心理学が自分の思っていたよりもずっと面白い学問だという感想を,授業の終わりに持ってもらえればそれに優る喜びはない。

2008年4月8日火曜日

授業開始

Boy, have I got this guy conditioned! Every time I press the bar he drops in a piece of food.

This cartoon from the Columbia Jester was reproduced by Skinner in 1961.

大学院は先週末から,学部は昨日(月曜日)から授業開始だったが,たまたま私の研究日が月曜日,土曜日は授業がないために,私にとっての新年度は今日が始まり。

大学院文学研究科心理臨床専攻には18名の臨床家の卵を迎えた。私の率直な思いからすれば,臨床家でなく,研究者の卵と書きたいところだが,親和の大学院は一種指定校だから,私たちが準備しているのは万全とは言えないまでもそのようなカリキュラムであり,ここに集う人が目指すのはあくまでも臨床家であるはず。まずはしっかりと基礎(心理学の基礎がどこにあるかが人によって見解が異なるのは善し悪し)を固めて,近い将来にしっかりとした臨床家に成長してくれればと思う。

これはいつも口にすることだが,日本の「教育」ということばと,欧米のeducation,erziehenとの違いは非常に重要criticalであると思う。私たちができることは,彼らが成長していくことの手助けに過ぎない。それは臨床場面でクライエントと対峙するときよりもはるかに指示的(いずれも支持的であることはいうまでもない)であるはずだが,それでも,私たちに出来ることは学生ひとりひとりが成長していく手助けに過ぎない(はず)。まさか大学院にきて,教えてくれたり,助けてくれたりするまで何もしないで待っている院生はいないだろうが,同時に私たちにできることの限界を常に感じていなければならないと思う。

さて,そのようにひとりひとりの能力を引き出すのには,あるいは何かの悩みを解決するのには,穴や井戸の奥深くに分け入っていかなければならないのだろうか,それとも,その人の周囲に何らかのセッティングをしてあげるだけでよいのだろうか。

ここに掲げたマンガが何を意味しているのかについては(英語では彼らの会話が書かれているけれど),考えてみて欲しい。

2008年4月6日日曜日

認定心理士の書類チェック完了

きょうは良い天気と思いながら,半日かけて書類のチェックを済ませました。こちらで対応できない不備があったために,返送して修正をお願いしなければならないものもありましたが,昨年よりは少なかったように思います。その他にも,共通した間違いなどが散見されましたから,来年度の説明会では,こうしたミスが少なくなるように,さらに説明を付け加えたいと思っています。

チェックは完了しましたから,もし受領の連絡が届いていない人がいたら,ご連絡下さい。

2008年4月5日土曜日

認定心理士の書類受領状況

ぽつりぽつりとチェックを始めています。ちょっとがっかりなのは,結構不備が目立つことです。順次チェックして,こちらで対応できる不備については対応していますが,問い合わせをしなければならないものが3件発生しています。

それから,これは全くの老婆心かも知れませんが,提出書類,つまり誰かに見てもらうことを前提とした書類であることが考えると,もう少しきちんとした方がよいと思えることがあります。

たとえば,書類の向きが揃っていなかったり,書類の重ね方がチェックするときの順番になっていなかったり,自分の履修したもの以外のシラバスのコピーが配布したままの形で入っていたり,履修していないものに大きく×が書かれていたり,さらに細かいことを付け加えれば,修得単位表に書かれている順にシラバスのコピーが並べられていなかったり,送ってきた封筒が「吉野俊彦宛」となっていたりetc.

もちろん,申し分のない書類もありますが,こうしたことも散見されるのは残念です。

今日明日は好天に恵まれた週末になりそうです。昨日,一昨日と,大学から戻りがけに通った王子公園も夜間のライトアップをしていて(車で走りながらですから,ほんのちょっとですが),とても印象的な夜桜でした。

2008年4月4日金曜日

神戸の女子大

今年から新たに,神戸市にある女子大がオープンキャンパスで共同企画を始めることになった。まだ計画段階なので詳細については決まり次第ここでもアップしたいが,何より神戸市内にある女子大が5つだけだということに驚いた。考えてみれば,神戸の名前を冠する(もともとは神戸市内にあった)神戸女学院をはじめとして阪神間には,神戸市内以外にもいくつか女子大があるし,すでに共学化した大学もあるのだが,現在「神戸市内にある女子大学」は,神戸女子大,神戸松蔭女子学院,神戸海星女子学院,甲南女子大,そして神戸親和女子大の5つだけのようである。

これはこれらの五女子大学に限らずだが,「神戸市内にある女子大学」という一言で括れないそれぞれの個性があることを強調したい。実は私も着任する前は,神戸の女子大というと,なんとなくあんな感じ,こんな感じというイメージを持っていたのだけれど,親和はもちろん,非常勤で関わる松蔭も,他の3大学もそれぞれにユニークであることに気づくのに時間はかからない。5つの大学を全部まわってもらえなくても,いくつか回ってみて自分にぴったりくる雰囲気,大きさ,学生の印象などを見つけてもらえればと思う。

この夏,初めてとなるオープンキャンパスの共同企画について,折に触れてここでも紹介していきたい。

2008年4月1日火曜日

個人的には日本も大学のみ9月入学にできないかと思う一方で,日本の春の卒業式と入学式は本当にいい。尤も,ここで言う日本というのは地域限定で,北の国ではまた違うけれど・・・。

きょうは幸い好天にも恵まれて,通学部(学部)で450名の新入生を迎えることが出来た。大学院と通信教育部などを合わせると,全部で620余名になる。さらに,教職員も20名以上の新しい仲間を迎えて,親和も新しい出発の日となった。

心理学科も定員を1名上回る61名の新入生とひとりの新任の先生をお迎えした。現代女性のための心理学コース,心理学がわかる教員コース,臨床心理士コースという3本の柱には変化がないが,この柱で走り始めて2年目の今年,さらによい学科に育てたいと考えている。

受け取り状況

認定心理士の申請書類の受け取り状況です。本日までに25人から受け取りました。順次内容を確認して,受け取りまたは修正依頼のメールをお送りします。

一応,きょうの消印まで有効としていますが,もうしばらくは受け取り確認の作業に時間が必要ですから,間に合わなかったと諦めている人がいたら,まだ大丈夫ですので,お送り下さい。

なお,申請書類や手引きがダウンロード出来るようになっていますが,これを利用した人は25人中5人でした。

さて,明日からはまた新しい年度が始まります。様々な場面でのご活躍を祈ります。