2008年3月29日土曜日

「医師の指示の下」という体制は限界

きょうはいつもと毛色の違った話。この春から(とうとう)大学院のゼミを担当することになったからというわけでもないが,新たに臨床心理学のカテゴリを作ってみようと思わせてくれた記事の紹介である。

医師の指示の下という体制は限界というタイトルだが,現厚生労働大臣の桝添氏の「安心と希望の医療確保ビジョン」の第5回会議を受けての総括である。残念ながら,この話は看護師・助産師の業務範囲についてのものなのだが,臨床心理士とも関わってくる可能性がある(希望的観測だけれど)。

よく知られているように,現在の臨床心理士は国家レベルでなく一学会が事実上の母体となって設立した財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定する資格である。スクールカウンセラーの仕事も各都道府県の臨床心理士会から希望調査がくるなど,学校場面で大きな役割を果たしている一方で,精神科領域からは仕事が出来ないという批判を浴びることも少なくない。臨床心理士が国家資格化できない最大の理由は日本医師会や日本精神科病院協会をはじめとする医師側と心理士側とのおりあいがつかないことと言ってよいだろう。

これは理由・原因と言うよりも,ある意味で結果である。つまりなぜ折り合いがつかないのかについての原因によって生じた状態に過ぎない。「医師の指示の下」という体制が限界という話が臨床心理士とも関わってくるのはこの点においてである。「医師の指示の下」という体制が医療現場において原則であるのは,現在臨床心理士としてでなくても,心理士の勤務状態を見れば明らかである。私が心理士として勤務しているクリニックでも万一何かの問題が発生したときに責任を負うのは私でなく主治医である。この記事にあるとおり,看護師・助産師と同様に,臨床心理士の意識レベルも正規分布している。そしてここで指摘されているように,分布の中央を対象として議論が成されなければならない。

さて,私の意見は医療心理士(仮称)と臨床心理士の2資格(プラス1)で国家資格化することである。臨床心理士は医療心理士の資格取得を前提としてしか取得できない。医療心理士は学部卒として医師または臨床心理士の指示の下でのみ活動できる,臨床心理士は大学院修了を前提として(但し,一部の大学院にある専門職大学院は認めない),医師と共同して活動できる。さらに,現実問題として,専門医と同じようなもうひとつ上位の資格を設置して,医療現場で働く専門臨床心理士については医療現場で診療報酬点に準じた活動ができるようにする。臨床心理士については,医師と同様に自身の行為についての責任を法的に設定する。

さて,看護師・助産師が医師の指示を受けないで独自の判断で活動できるようになれば,臨床心理士の問題も少し風穴が開いてくるのではと期待しているのだが・・・。

2008年3月26日水曜日

書類到着

早速に,3通書類が届いています。研究室の前にも専用の箱を準備しましたから,大学に来られた方は研究室を訪ねてくださってもかまいません。大学院棟5号館3階の端っこ,537です。

研究室といえば2つ隣のS先生がご退職で研究室の片付けをされています。私は親和に着任して2年ですが,もっと長くいるような気がしていることもあり,ちょっと寂しく感じます。ますますのご健勝を祈って止みません。

2008年3月24日月曜日

認定心理士の資格申請


日本心理学会を母体とした認定心理士資格認定委員会が,ようやく第4版を発行し,私の手許にも一部送られてきた。とても幸いなことに,このぺージから手引きを含む申請書類がダウンロードできるようになった。4月に入ってからになるかという話だったが,事務局の努力で年度内に何とか間に合ったようである。

申請書類を作成するにあたって,注意すべきことがいくつかある。何より,ダウンロードできるものは新しい版だが,この春に入学する学生以前(今年2回生になる学生まで)は,第3版でも資格認定の判断を行うことである。

すでに,「すべての担当教員の名前を書く必要があるのか」などいくつか問い合わせがあったが,第4版では必要なのだが,第3版では必要ない。迷ったときには,第4版の手引きとは違っていたとしても説明会で説明したことをきちんと書いてもらえればそれで十分である。

私事になるが,今年度で臨床心理士の資格を取得してから丸5年が経過した。認定心理士にはそのような更新手続きは必要ないが,臨床心理士は5年間にポイントを獲得して申請する必要がある。つい先週末に無事に更新された認定証が届いた。実を言えば,基準をわずかに超える程度しかポイントを申請しなかったのだが,それでも合格は合格。一安心である。

2008年3月22日土曜日

春: おめでとう

昨日までの嵐のような雨と風が嘘のような,暖かな学位記授与式。親和に来て初めての謝恩会。いろいろと思うこともあるけれど,結局最後に言えるのはおめでとうの一言に尽きるのだろう。

同時にいつも思うのは,大学生活の真っ只中にいると,なかなか気づかないのだけれど,大学院などに進学しない学生にとっては,小学校以来続いてきた16年間の勉学の生活からも卒業するということである。それぞれの節目に卒業式を祝う以上に,これから先は,高等教育まで受けた一人の社会人としての生活をしなければならない,違う言い方をすれば,受け手から(大学でその準備をしているはずだが),作り手や送り手の立場に変わると言うことである。自分自身が社会を作っていく一人となるということである。

ともあれ,何より心身ともに健康で,よいことがあるようにとつくづく思う。

2008年3月18日火曜日

一足お先に

ここ数日すっかり春めいてきた。卒業式らしき光景も何度もみかけた。親和の学位記授与式は22日,そして入学式は4月1日。きのうは,入学式に先駆けてAO方式での入学予定者に集まってもらって楽しい時間を過ごした。

AO方式の入試については(もちろんAO方式に限らないが),賛否両論ある。タイミング良く掲載されたきのう(3月17日付)の朝日新聞では,学力試験を課さないことによる問題点の指摘と慶應義塾大学の藤沢キャンパスでの成功例とを挙げていた。確かに,学力試験を回避するためというごくごく消極的な理由だけで利用するのであれば,個人的にはAO方式は必要ない。一方で,学力試験だけによる選抜にも,学力さえあれば適性も志向性も問題にしないで,ただいわゆる偏差値の高い学部,大学を目指したがために,不全感,不適応による中退といった望ましくない結果を招いてしまうこともある。おそらくは何でもそうなのだが,使い方を間違えてしまえば結果は望ましくないものになってしまうのだろう。

幸いなことに親和でもAO方式で入学した学生の多くが,学生生活そのものを楽しみ,また私たちが望む他の学生を牽引する役割を果たしてくれてきた。考えてみるまでもなく,一般入試のみで入学する学生は,入試以外で大学を訪れることも,大学生活を体験することも,在学生の雰囲気を知ることも,ましてや教員と時間をかけて話すことも,まず望むことは難しい。翻って,AOであれば,親和でもそれぞれ十分な時間をかけた2度の予備面接と本面接,合格決定後の教員とのやりとり(特に児童教育学科の先生方はとても時間と手間を惜しまずにかかわっているとのこと),この日の連絡会など,他の学生に先んじて大学の様子に馴染むことができる。つまり,一足お先に入学しているようなものと言えばいいのだろうか。

5月恒例の親和行事をはじめ,様々な場面で学科を主体的にリードしてくれるような存在に育って,今年のAO選抜も十分な効果を挙げたと言えるようにと期待している。

2008年3月17日月曜日

公開講座

昨年の7月とこの3月にそれぞれ2コマ分2回ずつ,計8コマで,行動分析学入門という公開講座を担当させていただいた。基本的には,授業で扱っている内容を,心理学を専門としない方々にわかりやすく,また使えるものという意図で構成してみた。

きょう,8, 15日の受講生の方々へのアンケート結果のまとめをいただいた(土曜日に集めたもののまとめをもう月曜日に!!)。多くの方が楽しんでくださっていたというのは私にもとても嬉しいことだった。ただ,個人的には,3回目のルール支配はまだしも,最後のセルフコントロールについては,言葉足らずのことが多々あって,最後のコマはただ作っていった資料を読むだけという,申し訳ない講座になってしまったと反省している。

言葉足らずというのは,ちょっと違っているか。つまり,行動分析学の言葉を使わないでもっと行動分析学が扱っている内容をきちんと伝えられないということなのである。セルフコントロールの定義が,「即時小強化と遅延大強化とで,後者を選択すること」というのは,行動分析学を学んだものにはよくわかるし,なぜそのような言葉を使わなければならないかも理解している。けれども,スケジュールの話も,オペラント条件づけの実験パラダイムの話も十分にしないままに,こうした表現を使うのは,受け手を無視した自分勝手なやり方である。話しはじめてはみたものの,受講生の方々の反応などからそれに気づいたときには時すでに遅し。

セルフコントロールでのもうひとつのヒントである,行動のレパートリーが乏しいのである。セルフコントロールという概念を伝える行動のレパートリーが少ないのである。と言うよりも,行動分析学の枠組みでそれ以外の伝え方を知らなかったことに,今更ながらに気づいたのである。

このような公開講座に限らず,受講生とのやりとり,受講生からいただくものがあることは,話す側の最大の好子(正の強化子)である。私が頂戴したたくさんの強化子,そしてヒントを今後に役立てることができればと思う。この場を借りて,あらためてお礼を申し上げたい。

2008年3月14日金曜日

おめでとうございます

最後に書いてから1ヶ月近く経過してしまいました。私自身もこのブログを開くことなく過ごしていました。アクセス数も少しは増えていたのでしょうか。

さて,きょうのタイトル,「おめでとうございます」というのは月曜日の話。親和でも先週の教授会の認定を受けて,卒業認定の発表がありました。4回生まで心理学研究法の再履修を頑張った学生が結構いたのですか(1回目の再履修は前任の先生からの引き継ぎ),無事全員が単位取得しました。ある学生(私のゼミ生ですが)は,指導教員(つまり私)と同じように,再試験を受験,無事に合格しました。試験の結果については報告を受けていなかったので,教授会で認定者リストの中に名前を見つけたときはほっとするやら,嬉しいやら・・・。

私もいつのころからか,ギリギリになるまで仕事をしないことが多くなってしまいました。明日は公開講座の最終日なのですが,つい今し方配付資料を含めて準備が一応整ったような状況です。もちろん単なる偶然に過ぎないのでしょうが,指導の教員と学生も少しの間一緒にいることで,行動傾向が似てくることでもあるのでしょうか。

何はともあれ,ご卒業おめでとうございます。学位記授与式,謝恩会,いずれも楽しみにしています。