2007年12月4日火曜日

行動療法学会に参加しました

臨床心理士の資格を取得してから,日本行動療法学会に入会したものの,年次大会への参加は去年に続いて今年でようやく2回目。私が現在本拠としている行動分析学会とずいぶん雰囲気が違っているのがおもしろいと言えばおもしろい。当然基礎系の人がいないこともあって,学会に参加しても知っている人はほんの一握り。そして,なぜか若い人を含めてきちんとスーツを着ている参加者が多いのも際だつ違いの一つである。良くも悪くも行動分析学会はTシャツにジーパンという出で立ちの人が少なくなく,ごくカジュアルな雰囲気なのだが,こちらはもうすこしきちんとしているというか畏まっているというか・・・。

気にかかったことがいくつか。まず,研究発表に,○○性と●○傾向の関係についてという形でまとめられるものが目立ったこと。要は質問紙を複数配ってそこで得られた数値から両者の特性の関係を,因果的に捉えようとするものである。これが現在多く行われている研究法のひとつであることは認めるのだが,行動療法学会でそれが目立ってしまうのはちと寂しい。いきおい,私が聞きたいと思う発表の数はごく少数にとどまってしまうのはありがたいことなのかどうなのか・・・。

もうひとつは,そうした質問紙での研究がメインだからなのだろうが,言葉の使い方がとても雑である。たとえば般化という言葉。おそらく多くの般化は反応般化でなく刺激般化なのだが,そのオリジナルの条件刺激または弁別刺激が何かを明確にしないまま何となく2つの事態が似通っているように見えると般化と呼んでしまっていたりする。参加したワークショップで不安階層表の話が出ていたが,ここではパヴロフ型とオペラントと混同したまま議論が進んで,何がターゲット行動であるのかさえ明確になっていない。「何となく行動療法」,「なんちゃって行動療法」と呼びたいような印象である。ちょっと意地悪な言い方をすれば,認知行動療法は,もともと「なんちゃって行動療法」なのだろうけれど。

もちろん勉強になったこともたくさんあった。上述の言葉が曖昧に使われたまま(極端な例は,操作的定義と言いながら,全くその定義に「操作」が含まれていなかったり)であることに批判するからには,私自身ももう一度その言葉の定義を明確にしなければならない。不安階層表について,これまであまり考えたことがなかったのだが,これについては3つのタイプに分かれることに気づいて,論文にまとめてみようかと思っているところ。

また,従来からブログを読ませていただいている久野能弘のワークショップでは,様々な領域での行動療法の展開,とりわけ学校の先生方を対象としたワークショップの話はとても興味深く,久野先生のお若い頃の活動の様子のビデオというおまけまでついていた。

マンイドフルネスの熊野先生のワークショップでもすぐ使えそうな,簡単なワークを教えていただいた。ただその一方で,熊野先生でさえ,学習理論の基礎的な用語を混乱して使っていたことに驚いたり(三項分析という言葉はいったい誰の造語なんだ?),表面的な類似性からACTの話を仏教とつなげて議論したりというのは私にはどうしてもなじめない。

全体を通して,結局行動療法の基礎が行動分析学にあること,認知という言葉を頭につけて行動療法や行動分析学への間口を広げてくれている現状はやがてきちんと行動分析学に立ち返るためのステップとなってくれるのではという楽観的な見通しを得ることができたのが一番の収穫だったのかもしれない。

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