2007年10月22日月曜日

子どもの心をしずめる24の方法

新聞各紙の日曜版は図書案内にページを割いている。きょうの図書欄にはそれほどめぼしいものがなかったものの,3点面白そうな広告と記事を見つけた。

ひとつは,北大路の心理学と科学についてのもの。臨床心理学における科学と疑似科学,そしてロールシャッハテストは間違っている: 科学からの異議他2冊。いずれも,臨床場面での実践家としての活動と一般化を問題とし,科学としての信頼性や妥当性を重視する科学者としての活動とのギャップを扱っていると考えればよいのだろう。私が授業で扱う日常知(経験知と呼んでもよいのだが)と,科学的にわかっていくこととのギャップは時にいかんともしがたい。けれども,少なくとも臨床場面で活動(しようと)する人たちが,誰かの主張を無批判に受け入れてしまうことだけは避けたい。これら2冊は何かを教えてもらうのでなく,自分で論理的に考えて,咀嚼する練習にもなるかもしれない。

日常知と科学知とは,理想的にはやがて重なっていくと考えたいが,この稿のタイトルに掲げた本はそんな好例のひとつかもしれない。子どもの心をしずめる24の方法もきょうの朝日で記事として紹介されている。目次だけを挙げてみると,

自分の気持ちをしずめる方法の取り入れ方
  お手本を見せましょう/ いくつかのステップにわけて教えましょう/ 取り入れ方のヒント/ 子どもに合った方法の選び方/ いつでもどこでも使える方法と感情をためこまないために日課として行なう方法
気持ちをしずめる24の方法
  からだを使う/ 聞く・話す/ 見る/ ものをつくる/ 自分をなぐさめる/ ユーモラスな方法

この本の著者Elizabeth Craryは,小学校の教師を経て,親や教師,子どもを支援する活動を25年以上続けている。M.S.とあるから,おそらく修士修了した後に現場で経験を重ねてきた人なのだろう(M.S.はこれまたたぶんだけれど,Master of Scienceのはず,ちなみにイギリスだとMSc)。まだ実際に本を手にしたわけではないが,「気持ち」のコントロールが,「気持ち」に集中するのでなく,上記のような行動によって行われていると考えられているように見える。

行動分析学が誤解されるひとつに,行動だけを見て「気持ちや感情」を考えていないというものがあるが,ここで紹介されている内容は,行動分析的な考えとおそらくうまく合致しているように見える。うまく合致している考えというのは,「気持ちや感情」は状態であり,その状態は私たちを取り巻く環境や,自分自身が行った行動とその結果によってもたらされるというものである。社会的スキルの獲得の重要性を思う。

さて,もう1冊は新書。松本聡子という若い人が,文春新書に書いた
あなたは人にどう見られているか。東京工業大学で大人気の授業をまとめたものらしく,面白そうに見える。社会心理学の知見をベースに書かれているとあるから,タイトルは一見怪しげだが内容とすればきちんとしたものなのだろう。おそらく,人からどのように見られているのかは,他人をどのように見るのかと同じくらい,社会的な動物である人間にとっては重要な関心事であろう。一般的に人間関係をうまく築くことがうまくないと言われがちな「今どきの若者」たちに取ってみると,そのような内容の講義は願ったり叶ったりなのだろう。これを出発点として,ただそこで呈示されるスキルだけでなく,研究の方法論を理解するところへ発展させていけば,さらに,研究内容をそのような身近な直接的なテーマから人間の行動に関するより基礎的なテーマへと発展させれば言うことはない。

なお,ここでの書籍のリンクはできるだけ,本やタウン・ほーほー堂のものを使っている。親和の生協と提携していて大学で注文したものを受け取れて便利だから。

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